実は当事者でも混乱しがち?
性指向・性自認と性表現の違いと定義について

皆さんは自身のセクシュアリティをしっかり理解していますか。 大概の方は自分の性の在り方、方向性にある種の誤解を持っているケースがほとんど。

言われてみると性自認、性指向と性表現の違いが分からない為、いまいちLGBTQに対する理解が及ばないことは十分考えられます。

今回のコラムではゲイ当事者であっても意味を履き違えて捉えてしまいがちな、性指向、性自認と性表現の定義の違いを解説していきたいと思います。

当事者でも混乱する性指向・性自認と性表現の違いや区別を徹底検証

性別とは私達が思っている以上にデリケートで様々な分類が可能です。
単に男と女だけでは表しきれない、様々な性の在り方。
セクシュアリティについてより理解を示す為には、まず性指向・性自認の違いを正しく把握することが大切です。

今回のコラムではそれに加えて、セクシュアリティの一部を構成する「性表現」についても解説していくのでぜひ最後まで読んでみてください。

ゲイも覚えておきたい、人の性を構成する3要素とは

性と一言で表しても、イコール男性、女性だけで終わるわけではありません。
性別は私達が思っている以上に多くのパターンがあり、なおかつ好きになる対象も十人十色。

LGBTQを理解する上でまず整理しておきたいのが性自認、性指向そして身体的性の違いです。ここではそれらの違いや定義を分かりやすく説明していくので最後まで目を通してみてくださいね。

身体的な性

最も分かりやすいのが身体的な性ではないでしょうか。
これは生物学的、つまりはXX染色体を持つならば女性、XY染色体を持つならば男性という定義に沿った性の見解です。

生まれた時の身体的な性が戸籍に登録されている性別になります。

なお例外的に先天的な染色体の異常により、男女の両性を兼ね備えたインターセックスで生まれてくるケースも。この場合は戸籍上の性別を決定する為の医学的手術やホルモン治療などを基に性別を決める必要があります。

性自認

性自認という言葉はよく聞きますが、しばしば「性自認はゲイ」「私の性自認はレズビアン」と勘違いしている方がいます。

まず性自認という言葉の定義についてですが、これはシンプルに「自分が認識している性」という意味合いです。
簡単に言うと、「心の性」という言葉が一番しっくりくるかもしれませんね。

「自身は男性である」と認識している場合の性自認は男性になり、「自身は女性である」と認識している場合は性自認が女性になるわけですね。

ただし注意しなければならないのは必ずしも生まれた時の性別が「自分が心で認識している性」と一致している訳ではないということです。

トランスジェンダーという言葉をよく聞きますが、トランスジェンダーは心と身体の不一致を言います。一方で生まれた時の性と心の性が一致している方は、シスジェンダーと区別している点には注意が必要です。

また男性、女性以外の性を「自分が在るべき性」と定めているケースがあります。
中性であったり、男性でも女性でも無い無性を自認する場合もあります。

それらはノンバイナリーまたはXジェンダーと呼びますが、その他にも定まった性別がまだ分からないというクエッショニングという性自認を持つ方もいます。

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性指向

異性愛、同性愛に両性愛、だいぶ馴染みのあるこれらの言葉は性指向を表しています。ゲイ男性の場合は同じ男性に心惹かれるわけですよね。

つまり生まれ持った性や心の性はさておき、どんな人を恋愛や性の対象にしているかというベクトルを表わします。性的指向を考える際に難しくなるのが、心の性に軸を置くのか、それとも生まれた時の性を軸に置くのかということです。

基本的に性指向を考える時は、自分が在るべき性、つまりは心の性を軸にして考えるのが理想とされています。

ややこしいので幾つか例を出して考えていきましょう。

自分が男性で、心の性別が男性の人が好き

この場合の性指向はゲイになります。

自分が女性で、心の性別が女性の人が好き

この場合の性指向はレズビアンになります。

ただし心の性と生まれ持った性が異なるトランスジェンダーの場合はややこしくなります。例えばある男性が、MtFのトランスジェンダー(男性として生まれ性自認が女性)に恋心を抱く場合、その性指向は女性になります。

このように性指向を語る際は性自認が深く関わってくるので、非常に分かりにくくなってくるのです。

その為性指向をシンプルに考えるには、身体的な性ではなく心の性別で考えるべきであるということを覚えておいてください。

なお補足として性指向と性嗜好は同じ読み方ですが、後者はいわゆる性癖であり「どんな自称、プレイに興味があるか」というフェチズムに関連する用語なので同一視してはなりません。

性表現とは?一番最後の性を構成する要素

身体の性に始まり、性自認、性指向。
なかなか複雑で混同しがちな性を構成するそれらの要素と一緒に覚えておいてほしいのが性表現になります。

ここではその性表現についてを分かりやすく説明していくので、誤解のないように正しく理解をしていきましょう。

性表現とは性を構成する4番目の要素

性を構成するピースというのは前項でお話しした身体的性、性自認、性指向でしたね。その定義は国や考え方によっても異なりますが、性表現とはこれらに加えて第四の性決定要素とも言われています。

端的に回答を述べてしまうと、性表現というのは振舞いや言葉遣いなどの言動、そして服装を表します。見た目という客観性に大きな影響力を示すものなので、その人の性自認や性指向がある程度、第三者からも推測しやすい要素です。

ちょっとフェミニンな洋服、長めの髪型、大きめのメンズルック、ボーイッシュな服装と振舞い、これらも典型的な性表現の例と言えるでしょう。

注意しなければならないのは、性表現は必ずしも身体的な性、性自認とは一致しないとです。例えば身体的な性、性自認が男性で、性指向も同性の場合はゲイですが、性表現は必ずしも男性的とは言えません。

ドラァグクイーンがいい例でしょう。
奇抜なドレスを纏っていてバッチリメイク、艶めかしく女性的なトーンの話し方、これらは女性的な性表現と言えますね。

ただしドラァグクイーンだからといって、性指向がゲイやバイセクシュアルであるとは限らず、ストレートの男性も勿論います。

個人個人の服装や振舞い、言葉遣いなどの性表現でその人の性自認つまり心の性や好みを把握することはできないので、ある種の目安でしかありません。

少し女性っぽい服を好む男性を見て、「この人は女性として見られたいのだろう」と色眼鏡で判断してしまうと大きな誤解や溝を生むこともあるので注意が必要です。

なお、性表現は文化的な背景やモードも考慮に入れなければなりません。
例えばスコットランドでは伝統衣装として男性がタータンチェックのスカートを履くこともありますよね。

また性を限定しないメイクアップや宝飾品もあり(例えばメンズジュエリーとしてのパールなど)、今後は性表現にもより多様性が出てくることでしょう。

性表現はその人らしさを図る物差しと言えますが、その個性が軸から外れていると思われてしまうことは多々あります。

結果として性表現が社会での生きにくさとして消化されてしまうことも少なくありません。

まとめ

今回のコラムではLGBTQを理解する上でのベースとなる性を構成する要素である身体的な性、性自認、性指向、そして性表現についてを解説していきました。

特に性自認と性指向の違いは分かりにくく、性自認は「心の性」を意味し、性指向は「どの対象に性的、恋愛感情が向くのか」を意味することを覚えておきましょう。

心の性は必ずしも身体の性と一致しないですし、性指向は性自認を軸に考えるべきです。

性表現に関しては人の見た目や人となりを判断する上での物差しになりますが、そこから性指向や性自認を正しく把握することはできません。

男性がメイクをしたり女性がネクタイを着用したりするその理由は人それぞれであり、私達が固定概念で男とはこうあるべき、女とはこうあるべきと判断することではありません。

当事者もそれ以外の方も今まで通説とされてきた固定概念を崩すことで、自分らしさを念頭に置いた性の在り方、生き方が今後より普及していくことを願わずにはいられません。

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この記事を書いた人

橋本ウサ太郎

橋本ウサ太郎
新宿二丁目の元バーマネジャー、海外放浪の末、年下スペイン人男性と同性婚。
スペインの田舎町で悶々とした日々を送りながら平和に暮らすゲイ。
アメリカでの代理母出産により二人パパになる予定の三十路ライター。
好きな言葉は、「ペンは剣よりも強し」。

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