なぜこの制度があり必要なのか?
同性パートナーシップ証明制度をおさらい

  • 2019.07.10
  • 2022.02.07

ニュース・情報

同性パートナーシップ証明制度という言葉を聞いたことはありますか?
LGBTという言葉が世の中に浸透するとともに広まってると言われていますが「一体どういう制度なのだろう?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

結婚に相当する関係と認める制度とも言われていますが、今回はこの「同性パートナーシップ証明制度」についてお話ししたいと思います。

同性パートナーシップ証明制度とは、一言で言うなら「同性カップルの関係性が異性愛者の結婚に相当するものである」と認める制度のことです。

日本では同性カップルは結婚できません

そもそもなぜ「同性パートナーシップ証明制度」という制度があるのでしょうか。
それは同性カップルが2019年現在、日本国内で結婚(婚姻)できないことが背景にあります。

婚姻は日本国憲法24条1項で定められています。
それによると「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と記されています。

また、民法731条では「男は、18歳に、女は、16歳にならなければ、婚姻することができない」と謳われています。
上記の法律によると、18歳以上の男性と16歳以上の女性のあいだでのみ結婚できる、と解釈できます。

ここで注意しなければならないのは憲法24条1項の「両性の」という記述です。
つまり婚姻は男女間に適用されるので、18歳以上の男性や16歳以上の女性であったとしても、相手が同性である限り、認められないのです。

海外に目を向けてみると、2001年4月1日にオランダで認められたのを皮切りに、2019年1月現在では25の国々で同性婚が導入されています。

具体的には、オランダ、ベルギー、スペイン、カナダ、南アフリカ、ノルウェー、スウェーデン、ポルトガル、アイスランド、アルゼンチン、デンマーク、ブラジル、フランス、ウルグアイ、ニュージーランド、イギリス、ルクセンブルク、アメリカ、アイルランド、コロンビア、フィンランド、マルタ、ドイツ、オーストラリア、オーストリア(施行順)と欧米諸国が大半を占めています。

制度は2015年、東京都渋谷区でスタート

日本国内でも同性婚を認めるべきだという声が上がっているのは事実ですが、実際に導入される目処は立っていません。
こうしたなか、2015年秋に東京都渋谷区と東京都世田谷区でスタートしたのが「同性パートナーシップ証明制度」です。

そうなんです、実は今(2019年現在)から4年も前に始まっているのです。
渋谷区と世田谷区では制度の内容に違いがあるのですが、それについて説明する場は別に設けますので、ここでは渋谷区を例にとってお話しします。

渋谷区では、渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例(2015年4月1日施行)に基づき、男女の人権尊重とともに「性的少数者の人権を尊重する社会」の形成を推進(渋谷区公式サイトより)。

このなかで、法律上の婚姻ではないものの、男女の婚姻関係と異ならない程度の実質を備えた戸籍上の性別が同じ二者間の社会生活における関係を「パートナーシップ」と定義し、一定の条件を満たした場合にパートナーの関係であることを「渋谷区パートナーシップ証明書」を発行することで証明しています(同)

対象となるのは区内在住の20歳以上

渋谷区パートナーシップ証明書は、4つの条件を満たしている同性カップルであれば交付申請できます。

  1. 東京都渋谷区に居住し、かつ、住民登録があること
  2. 20歳以上であること
  3. 配偶者がいないこと及び相手方当事者以外のパートナーがいないこと
  4. 近親者でないこと

簡単に言うと、たった一人のパートナーを持つ渋谷区在住の20歳以上であれば、互いに親戚関係にない限り、証明書を発行してもらえるということです。

申請にあたって必要なものは、

  • 2人それぞれの戸籍謄本または戸籍全部事項証明書(3ヶ月以内のもの)
  • 公正証書の正本または謄本
  • 本人確認できる証明書(運転免許証、パスポート、写真付きの住民基本台帳カード、在留カードまたは特別永住者証明書など)

となっており、申請を受け付けてから3日程度で発行される流れとなっています。

証明書発行で享受できるメリット

さて、実際にパートナーシップ証明制度が発行されたカップルには、どんなメリットがあるのでしょうか。
得られるメリットはいくつかありますので、見ておきましょう。

その1. 区営住宅などへの申込みが可能になる

ここも渋谷区の例をとってお話しすると、行政サービスの面ではまず、区営住宅や区民住宅への申し込みが出来るようになります。

いつでも一緒に居られるよう「一つ屋根の下で暮らしたい」と考えるカップルが直面する問題のひとつに「同性カップルが同棲を認めていない物件が多い」ということがあります。

セクシュアル・マイノリティーに対する社会的認知が高まっているとはいえ、数少ないLGBTフレンドリーな企業を除いては、そもそもゲイカップルが借りることを想定していない、という不動産屋も多いと聞きます。

そんななかで区営住宅や区民住宅に正式に同性カップルとして入居できる可能性があるというのは、ありがたいことですよね。

その2. LGBT向け住宅ローンサービスが受けられる

住まいに関するもうひとつのメリットは、各金融機関によって内容は異なるのですが、LGBT向けの住宅ローンサービスが受けられるということ。
メガバンクのみずほ銀行では、収入合算・ペアローン(家族ペア返済)の配偶者の定義に同性パートナーも含む内容となっています。

収入合算・ペアローンというのは、住宅ローンを組む際、夫婦や親子の収入を合わせることで住宅ローンの借入額を増やす方法のこと。

同性カップルも配偶者と認められているので、2人の収入を合算した額に見合うローンを組めるようになるのですが、申し込みの際には渋谷区が発行するパートナーシップ証明書の写しなどが必要になってきます。

その3. 生命保険の受取人にパートナーを指定できる

住宅ローンとともに人生における大きな出費のひとつに生命保険があると思いますが、こちらも会社によっては同性パートナーを生命保険の受取人に指定できるケースがあります。

具体的には、アクサ生命、アフラック、AIG富士生命、オリックス生命、かんぽ生命、ジブラルタ生命、住友生命、ソニー生命、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命、第一生命、チューリッヒ生命、日本生命、SBI生命、PGF生命、プルデンシャル生命、マニュライフ生命、三井住友海上あいおい生命、明治安田生命、メットライフ生命、ライフネット生命、楽天生命(50音順)など、国内の多くの生命保険会社がLGBT向けの制度を導入しているようです。

その4. 携帯会社の家族割りなどに適応可能

一方、日常生活ではどんなメリットがあるでしょうか。

「これがなくては生活できない」もののひとつの携帯電話やスマートフォンがあると思いますが、国内大手3社(DoCoMo、au、ソフトバンク)では同性カップルを家族割の適用対象としています。

DoCoMoとauは「地方自治体の条例等により、同性とのパートナーシップ関係が公的な証明書による証明される場合」、ソフトバンクではこれに加えて「2人が同一住所であること」を条件としています。

3社ともに同性パートナーシップ証明制度が国内で導入された2015年から、同性カップルに家族割を適用しているので、速やかな対応だったと言えることができるのではないでしょうか。

また、あまり日常的ではないかもしれませんが、カップルの一方が病気や怪我などで入院した場合、もう一方が病室への面会を許されるというメリットもあります。

家族以外の面会が断られるような状況でも、ケースバイケースですが、同性パートナーシップ証明制度などで公的に認められた関係性であれば、病室への入室が認められるということもあるようです。

紙切れ一枚、されど公的に認められた関係性

ここまで「同性パートナーシップ証明制度」の概要や制度によるメリットについてお話ししてきました。

最後にお伝えするのは、行政機関や民間企業が提供するサービスでのメリットとは異なる部分についてです。
同性パートナーシップ証明制度が導入された頃「はじめて自分がLGBTとして世の中に存在して良いと認められた気がした」という当事者の声を聞いたことがあります。

同性パートナーシップ証明制度は、男女間の婚姻制度と全く同じというわけではありません。

それでも地方自治体など公的な機関が同性カップルの関係性を認定する、というのがセクシュアル・マイノリティーにとって本当に嬉しいことであり、LGBTの住みやすい世の中への大きな一歩であるといえるのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

いなば

いなば
神奈川県生まれ。小学生の頃から何となくゲイだと気付き、中学高校と男子校で過ごすなかでセクシュアリティーを確信。大学在学中に母親へカミングアウト済み。
20歳で初めて自分以外のゲイと出会う。
相方の海外駐在に伴い、退職して赴任先へ付いていったことも。
生意気で向こう見ずなクソガキ時代から年齢を重ね、徐々に穏やかで楽天的な性格に。元新聞記者で現在はライター・カメラマン・インタビュアーとして活動する東京在住の40代ゲイ。

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