似ていて間違いやすいけれど実は全く異なるもの。
同性婚と事実婚(パートナーシップ)の違いについて

  • 2020.06.02

恋愛・結婚

「同性愛者は結婚できないもの」
こんな固定概念は崩れ、多くのゲイカップルが法の保護のもとで愛を育んでいます。

日本では同性婚が認められていませんが、欧米の多くの国で同性同士の結婚、または事実婚を認めているのです。

今回のコラムは、その同性婚と事実婚(パートナーシップ)の違いについてピックアップ。
同性結婚が容認されている欧米を例にとり、同性婚と事実婚の違いについてわかりやすく解説していきたいと思います。

よく聞く事実婚の定義とその実態について

同性結婚が可能な国では同時に事実婚制度が整っていることがあります。
一方で同性婚は不可能だけれど、同性同士が利用できる事実婚が可能な国も少なくありません。

日本でもいくつかの地方自治体でパートナーシップ制度が採択され話題を呼びましたが、果たして事実婚とは?
ここでは気になるその事実婚制度について改めて考えてみましょう。

婚姻に準ずる関係=事実婚

事実婚、またはパートナーシップ、シビルユニオンとも呼ばれる権利は、男女または同性同士で利用可能な婚姻関係に相当する間柄のことを言います。
そこに法的な効力が発生し、結婚=事実婚とはいえないものの、法律に則った多くの権利が認められている関係のことです。

特に欧州で事実婚制度は高度に発達しており、それぞれの国でその名称や法律の適応範囲こそ異なりますが、婚前契約が不要であったり、手続きが比較的簡潔であったりすることから多くのカップルが利用しています。

同性カップルが利用するケースも珍しくなく、結婚制度というガチガチの伝統に捕らわれるのではなく、同棲の後にサクッと事実婚に切り替えて愛情を深めていくカップルが多いのも特徴的です。

事実婚制度が認められている国

事実婚制度、つまり同性同士でもパートナーシップを結ぶことができる国は欧州を中心に広がりを見せています。
ここではそれらの国をご紹介していきたいと思うので、ぜひ参考にしてみてくださいね!

欧州地域

オランダ、ベルギー、ドイツ、イギリス、アイスランド、オーストリア、マルタ、アンドラ、スペイン、フランス、イタリア、クロアチア、キプロス、チェコ、エストニア、ギリシャ、ハンガリー、リヒテンシュタイン、サンマリノ、スロベニア、スイス、ポーランド、スロバキアなど。

オセアニア

オーストラリアの一部の州、ニュージーランド。

アメリカ大陸

アメリカ、カナダ、メキシコ、アルゼンチンのいくつかの州と、コスタリカ、コロンビア、チリ、エクアドル、ブラジルなど。

このように事実婚制度は西欧を中心にしたヨーロッパ、LGBTQ大国であるオーストラリアにニュージーランド、そしてアメリカ大陸の国々で幅広く認められています。

一方アジア圏においては西欧のような柔軟な法規制が整備されておらず、国として合法になっているのは皆無。

日本や台湾などの一部の市町村では同性が利用できるパートナーシップ制度を利用できるところもありますが、あくまで自治体レベルのものであり、外国人配偶者を伴ったビザ発給が容認されないなど多くの問題点があるのが現状です。

日本の同性愛者を取り巻くパートナーシップ事情

日本でも「渋谷や世田谷区なら同性結婚ができる!」と勘違いしている方が少ないながらもいるようですが、これらは地方自治体によるパートナーシップ制度のことを指します。

つまり法的に効力のある同性結婚ではなく、その区内、市内で二人の関係を認める制度となっており、いくつかの条件を満たし申請することで、パートナーシップ証明書が発行されるということです。

なお自治体によって申請する条件や内容も異なり、その殆どが同性カップルを対象にしていますが、性同一性障害をカバーしているところから、男女が利用できる自治体もあるなど、それぞれに独自の色がある点も特徴的。

「ただの紙きれを貰うだけ」、「LGBTQを自治体が利用しているだけ」、という辛辣な声も少なくありませんが、実際は不動産契約(パートナーシップを結んだ地域に限る)、病院での面会や携帯電話の家族割引などに対して一定の効力があることも事実。

住宅ローンや保険などについても、その企業次第ではありますが、関係が認められれば、異性カップルと同様のサービスが利用できるところも少なくありません。

年々パートナーシップを締結する、または導入を計画する自治体も増えてきており、これが足掛かりとなり本格的な同姓婚の議論が始まると肯定的に捉える声も出てきています。

海外の事実婚では何が認められる?またそのメリットとデメリット は?

パートナーシップ制度について簡単に説明していきましたが、ここでは例を挙げてより深くその制度について考察していきたいと思います。
またパートナーシップを結ぶことで発生する、そのメリットとデメリットについても考えていきたいと思うのでこちらも参考にしてみてください。

パックス婚にみるパートナーシップの法的権利と結婚との違い

条例によって二人の関係を認めている日本のパートナーシップ制度と異なり、海外で認められているものは法律によって権利が保障されています。
ここでは国際的にも非常に有名なフランスの事実婚制度パックス婚(連帯市民契約)を例にして、その実態に迫ってみたいと思います。

フランスでは男女平等を目指し、同性カップルに異性同士の結婚と同様の権利を認めるパックス婚が1999年に設定されました。
ここで認められる権利についてまとめてみましょう。

  1. 税制上のメリットが婚姻と同様。
  2. 財産は両者別財産となり、契約書を作成することで詳細を指定可能。
  3. 相続に関して法定相続分はなく、遺言で指定。
  4. 性別を問わず外国人パートナーに居住権を付与。

などが主な法的権利として認められます。

パートナー同士が社会で生きる為の権利が結婚とほぼ同様に認められ、ただの同棲よりも安心して生活を営めること、また同性カップルも利用でき、このパックス婚がきっかけになり欧州で事実婚が発達していきました。

ただし結婚という選択肢で認められる、相手の年金を受け取ることはパックス婚ではできません。

また裁判所で簡単に手続きができるパックス婚ですが、相手の不倫が事実婚を解消する理由にならないという貞操の義務がないなど、腑に落ちない点も見受けられるのも事実です。

フランスにおいて内縁という脆弱な関係性、同性愛者にとっての家族の権利をカバーするべく生まれた制度。最近は結婚には興味がないけれど、二人のけじめとして同棲後にパックスを申請するケースが増え、同性カップルよりも異性カップルの利用が多くなっているそうです。

事実婚のメリット・デメリット

事実婚のメリットとして挙げられるのが、何度も言及している法令として認められた社会権利。
しかしそれ以外にも事実婚は結婚、同性結婚と比べて申請書類がシンプルであり、許可が下りる時間が短いというのも大きなメリットと言えます。

海外の同性婚は二人の関係を証明する物的証拠や証言、移民をする為の知識やお互いのことをどれだけ把握しているかをテスト形式で試す場合も多く、このようなステップを踏むのであれば事実婚でというカップルも実は多いのです。

デメリットとして挙げられるのが多くの国で特別養子縁組を取ることができない、第三国に移住する場合にビザの問題が生じる場合がある、そして同じ国内でも事実婚の法律の適応範囲がかなり異なることなどが挙げられます。

パートナーシップを結んだ後、マイホーム購入、子どもの誕生などがきっかけで、あらたに結婚をするカップルもいますが、再度婚姻の為に煩雑な書類を集める必要があり、その数はそこまで多くありません。

海外のゲイカップルが結婚を選ばずに事実婚を選択する理由

日本と異なり同性結婚が可能な海外でも、結婚制度を選ばずに事実婚制度を利用するゲイカップルはウナギ登りに増えています。
なぜ彼らは結婚という手段を選ばずに、パートナーシップ制度を利用しているのか、ここではそんな疑問について考えてみましょう。

ゲイカップルにとって大切なのがフットワークの軽さ

ゲイ男性にとって意外と大切になることがあります、そう、それこそが「フットワークの軽さ」!

短命で終わることが多いゲイカップルの交際は、愛し合っていたとしても、身体の浮気の多さが原因で破局を告げることが少なくありません。
例え同性婚が法制化されていても、子どもがいないカップルは二人を繋ぎとめる絆が脆弱になりがち。

そこで海外のゲイカップルはしばし労力も手続きも煩雑な同性結婚ではなく、カジュアルに二人の関係を認めることができ、結婚に準じた権利を享受できるパートナーシップを結びます。

フランス、スペインにオランダなど同性結婚が当たり前の国々であっても、パートナーシップをするゲイカップルは非常に多いのです。
そして彼らに「なぜ結婚をせずに、パートナーシップを選んだのか?」を問うと、たいがいこの回答が飛んできます。

「だって簡単に別れられるから……。」

確かにその通り!
勿論同性結婚をして生涯愛を貫くゲイカップルもいます。

しかし海外ではよりカジュアルでいざという時にもすぐに別れることができる、そんなパートナーシップを選ぶ同性カップルが想像以上に多いのも事実なのです。

元々法律に縛られた結婚が好きではないという考えが欧米では多いこと、そして別れた時にバツイチにならずにすむことも、事実婚が支持される理由の一つになっています。

事実婚が抱える危機的な問題点とは?

パートナーシップには、届出を出す事実婚と、役所には何も書類を提出せず本人たちの自己満足による内縁関係がありますが、前者のスタンダードな事実婚には重大な問題が潜んでいることはあまり知られていません。

国、州によって認められる権利は異なりますが、通常該当国出身者と外国人が事実婚をすることで、その外国人パートナーにも労働許可付きの滞在が認められます。
つまりビザ目当てでパートナーシップを利用する悪質な外国人、または業者がいるということです。

この手の偽装結婚ならぬ偽装事実婚は、パートナーになる外国人男性がその国に合法的に滞在できる権利が得られる為、愛ではなくお金を通してパートナーシップを両者で結びます。

勿論違法であることは明白であり、私の住むスペインでも場所によってはスペイン人、外国人のパートナーの場合は事実婚の申請ができなくなるなど、国単位、市単位で事実婚に対してネガティブになっている側面もあるのです。

まとめ

今回は同性婚と事実婚の制度の違いについて解説してみました。

事実婚はより簡単に結婚と同様の権利を享受できる法制度ですが、パートナーと死別した時に相続権、年金の面で問題を抱えることも多く、カップルの価値観、スタンスだけでなく、状況に応じて事実婚または同性婚のどちらかを選ばなければなりません。

皆さんの中でも海外のパートナーと人生を遂げたいと考えている方もいると思います。その場合はまず同性婚、事実婚をする該当国、州の法律を事前によく調べてから愛の決断を下すこと、それが一番大切になってくるということを覚えておいてくださいね。

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この記事を書いた人

橋本ウサ太郎

橋本ウサ太郎
新宿二丁目の元バーマネジャー、海外放浪の末、年下スペイン人男性と同性婚。
スペインの田舎町で悶々とした日々を送りながら平和に暮らすゲイ。
アメリカでの代理母出産により二人パパになる予定の三十路ライター。
好きな言葉は、「ペンは剣よりも強し」。

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