HIVに関する悩みはゲイにはつきもの。
あるHIV感染者とそのゲイパートナーの話を紹介

  • 2020.11.22
  • 2021.01.21

健康

HIV感染に対する受け止め方や価値観は数十年の時の流れを経て随分変わってきました。
しかしHIVがゲイの病気という負のレッテルを張られ、そしてウイルスを完全には除去できないこともあり、未だに多くの差別に苦しむ人々がいます。

今回はそんなHIV感染に悩まされながらも、揺るがぬ愛を紡いでいる一組のカップルのお話をしていきます。
HIVが二人の愛を分かつ妨げにならない、その事実を皆さんと共有し、そしてHIV感染陽性の方々が前を向いて進んでいくための背中を押せることを願います。

HIV感染に悩み破局後に同性結婚をしたカップルの場合

まずこのお話はフィクションではなく、あるオランダの友人カップルの実話です。

本人特定がなされぬように少しのぼやかしはありますが、嘘偽りのない、甘くてしばし苦味も感じるストーリーになっているので、HIV感染者の方々だけでなく多くのゲイの方々に読んで頂ければ幸いです。

出会いは日曜の映画館

彼らが出会ったのは日曜の昼下がりの映画館、それも10年以上も前のこと。
今でこそ同性結婚をして正式なパートナーになりましたが、彼らもHIV感染という大きな壁を乗り越えて今の幸せを噛みしめているのです。

彼らはFさんとPさんというオランダ&ベルギーの国際恋愛カップル。しかしお隣同士ですし、Pさんの出身地はフラマン語と呼ばれるオランダ方言が話されているベルギー出身ということで、東京と大阪のカップルというニュアンスで捉えてもいいかもしれません。

涙脆い二人が見入ったロマンチックな映画、隣り合った男性が同じタイミングで涙をポロポロと流し、気づいたらお互いの手を握っていたという気の早い二人。

映画の話題をおかずに二人はしばらくアムステルダムのコーヒーショップでマリファナを蒸し、そしてその映画以外では全くかみ合わない趣味指向が逆に「自分にないものを持っている」と交際を決めたそうです。

幸せだけど一歩踏み出せない秘密

FさんとPさん二人が出会う前、Pさんには体調不良が続いた時があったそうです。
傍から見てもイケメン、本人も見た目以上の肉食系ということで週末には発展場通い、そして掲示板を通じて気になる男性と身体を重ねていたそうで、もしやという覚悟があったといいます。

悪い予感は当たってやはり結果はHIV陽性。
意外にも取り乱すこともなく、平静な気持ちでいられたとPさんは言いますが、悩んだのがFさんにどう伝えるべきかどうかということ。

Pさんはなかなか事実を伝えられなかったそうです。
勿論その当時は服薬をしていませんでしたし、セックスをすることに躊躇いがありデートはフレンチキス留まり。

気分が高まった時にたしなめられる日々に痺れを切らしたFさんにとうとう告白したのが、二人の出会いから半年ほどたった時のことでした。

「実はHIVに感染している。感染源は正直分からない」

いくら性病や妊娠に対しての性教育が充実しているオランダであっても、愛すべきパートナーの告白には愕然としたそうです。
やはり自分もHIVに感染してしまうかもという恐怖がPさんへの愛情を上回り、そのことにまた酷く落ち込み精神的に不安定になる日々。

後悔の念に駆られたPさんは申し訳ない気持ちを伝え、破局の道を選びました。

HIV感染が愛を分かつ理由

結局のところは、Fさんは自分のHIVとエイズに関する知識が欠乏していたこと、そして一度別れてみてわかったPさんへの思いの強さと愛情に気づき、復縁する選択をしました。

時系列では紆余曲折の末に結ばれてよかったというハッピーエンドになるわけですが、ここでなぜHIV感染が失恋に繋がるのかということを考えてみましょう。

  1. 関係が深い程家族や親せきへの事情説明が難しい
  2. 性生活に制限が出る
  3. 自分自身へのHIV感染が恐ろしい
  4. 膨大な医療費がかかる

これらの要素がHIV感染者とそのパートナーの関係を難しくする理由です。
これらは感染した当事者だけでなく、そのパートナーにも大きな重荷になることが考えられます。

しかし実際にはHIVのことを知れば知るほど恐怖心は軽減されます。

服薬をした上でコンドームを使用すれば性生活に大きな支障が出ることは殆どないですし、医療費も国によって異なるものの、例えば日本の場合高額医療費制度を申請すれば月々の出費も抑えられます。

確かに周囲へのカミングアウトや理解を得るには難しい側面がありますが、HIV感染しているから恋愛が享受できないと考えるのは少し話が極端かもしれません。
まずは欠乏しているHIV、エイズの知識をきちんと消化し、その上で結論を出す必要があります。

実際Fさんに関しても同様で、いわゆるHIVについて勉強する期間そして自分自身を見つめなおす時間がなにより必要だったということです。

それを乗り越えられるか、やっぱり無理なのかその器の容量こそ異なりますが、HIVが理由というより実際は本人同士の価値観の違いにより別離を歩むカップルも少なくありません。

Fさんは自身の浅はかなHIVに対する知識と偏見を謝罪し、そしてPさんからのカミングアウトに大きな賞賛を送ったそうです。

今では病院デートと名目し、半年に1度の検診時にはお洒落をして病院に向かい、病院食でヘルシーランチをしてからコーヒーショップでマリファナマフィンを食べるのが日課のようです。

それでも悩ましいHIV感染者の後悔と恐怖

ゲイに限らずHIV感染で悩む人々は心の病を抱えてしまうことがあるといいます。
しかし周りのカップルを見ると、実際病気が原因とは限りませんが強い絆で結ばれているようです。

話をFさんとPさんカップルに戻すと、今でこそ幸せなカップルであり、昨年には養子を迎えたふたりパパとして育児に仕事に奔走していますが、Pさんにはある悩みがあるといいます。

HIV感染者だからこその苦しみとは?

HIV感染がゆえに一度は諦めた愛、しかしパートナーFさんの勉強と理解により幸せになれたはずのPさんですが、それでも心がねじれる程の苦痛があるといいます。

それは今まで奔放に生きてきた自分への後悔、そしてもしかしたら自分がトリガーになり感染させてしまったのかもしれないという恐怖にも似た懺悔。
過去を後悔してもどうにもならないですが、ふとした瞬間に襲ってくる大波のような感情に対処する為に安定剤は欠かせないとのこと。

またもう一つの恐怖、それはHIV感染者の多くが抱えている「周りにバレたらどうしよう」というもの。

自分の病気は受け入れた、そしてパートナーにも温かく接してもらえている、それにも関わらずいつ何時にどこからともなく自分の病気がバレてしまわないかと考えると鬱になるといいます。

担当医または看護師や薬剤師、または感染の事実を知る家族や友人のどこからか個人情報が洩れてしまうとも限りません。
現在Pさんはある会社のマネージャー職に就いている為、より神経質になっているのでしょう。

日本でもアウティングが社会的な問題になっていますが、性別、国籍問わず平等な社会のオランダにおいてもその恐怖は拭えず、未だにHIV感染のアウティングに怯える日々を過ごしているそうです。

彼らが出会って10年前よりSNSが社会に浸透した為、いつ何時という可能性を考え出すと眠れなくなるということですが、「そんな時は養子に迎えた子どもFさんと一緒に川の字で寝る。それが結局一番の精神安定剤であり睡眠薬になるよと」「家族の大黒柱になった今は少しだけ不安が消えた」とぎこちない笑顔で笑っていたのを思い出します。

まとめ

HIV感染の有無が恋人との関係にどう作用するかは当事者、そしてパートナー次第としか言えません。
パートナー目線で考えれば到底受け入れられないと考える方も多いですが、まずは当事者の心情を理解し、そして自分自身がその病気をより知っていくことが何よりも大切です。

HIV感染しているパートナーの心身に気を揉んだり、自身が奈落の底に落ちた気分になったりするかもしれませんが、そんな時は一人で解決するのではなく、HIV陽性者・家族に対する支援団体にアドバイスを求めるのもいいでしょう。

自分が思っていたHIVに対する誤解の解消、そしてHIV感染者のパートナーや家族がいる当事者との意見交換から何かを感じ取れるはずです。

最後に言いたいことはHIVが不死の病ではなくなったこと、そしてそれが原因で諦めなければならないことは社会においてもほとんどないという事実、それだけは忘れないでください。

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この記事を書いた人

橋本ウサ太郎

橋本ウサ太郎
新宿二丁目の元バーマネジャー、海外放浪の末、年下スペイン人男性と同性婚。
スペインの田舎町で悶々とした日々を送りながら平和に暮らすゲイ。
アメリカでの代理母出産により二人パパになる予定の三十路ライター。
好きな言葉は、「ペンは剣よりも強し」。

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