パートナーシップじゃない!
彼と養子縁組をするメリットとデメリット

  • 2020.10.12

恋愛・結婚

ステディーな彼とだったら結婚したい。
同性結婚ができない日本で法的な保護を願うのであれば、どのような手段を取ればいいのか。

最近よく聞くパートナーシップをすればいいの?それとも養子縁組をすればいいの?
それぞれの制度が異なる特色を持っている為、何を求めているのかによってそのベストチョイスは異なります。

ここでは元来日本で頻繁に行われてきた養子縁組についてより深く踏み込んでいきたいと思うので、一歩進んだ関係性を望んでいる方は要チェックです。

そもそも養子縁組とは?ゲイが養子縁組を結ぶメリットとデメリット

養子縁組といえば、特別養子縁組と普通養子縁組(以下、養子縁組)に分かれます。
今回主題にしているのは、パートナーを守る意味合いで行う後者のケースです。

ゲイカップルの方は知っておいて損をすることはない制度ですので、ぜひ最後までお読みください。

養子縁組とは?またその条件を解説

養子縁組はその名の通り、結婚ではなく法的に新しい親子関係を作ることです。
基本的に年長者が養親になる形で、パートナーを養子にすることができます。

つまり法律的な新しい親子関係が認められることで、税金や相続関連、公共サービスを利用する上で婚姻に準じた権利が生じます。

養子縁組をしてしまえば、水面下で議論が続く同性結婚の必要はないと思われるかもしれません。
しかし婚姻と比べると認められる権利が若干弱いこともあり、養子縁組がどの範囲で認められており、何が保証の対象外になっているのかをしっかりと把握をすることが大切になってきます。

基本的に養子縁組をするには以下の二点を満たす必要があります。

  1. 養親は成年に達している事(未成年者を養子に迎える場合は家庭裁判所の許可が必要)
  2. 養子は養親より年下でなければならない

特別養子縁組との違いについて今回は言及しませんが、ご紹介している養子縁組に関しては血縁上の親との親子関係を保持したまま比較的簡単に「新しい親子関係」を作ることができるので、長年日本では同性カップルの法的な権利を享受する為に養子縁組が利用されてきました。

パートナーシップと異なる法的保護が養子縁組のメリット

養子縁組は結婚ではないといいましたが、またパートナーシップとも異なります。
パートナーシップは地方自治体による渋谷タイプの条例と世田谷タイプの要綱に分かれますが、両者ともに国の法律で保証された効力は有しておらず、いわば居住地区内での模範的規律としての役割が大きいと言えるでしょう。

法律で定められた効力が期待できるのは婚姻、または養子縁組ですがここで養子縁組のメリットをまとめてみると、

  1. パートナー(親子間)で相続権が発生
  2. 遺族年金の受け取り
  3. 生命保険の受け取り
  4. 公共料金の家族割等の適応
  5. 公営住宅への入居
  6. ローンの共同名義
  7. 病院での面会、同意が可能
  8. 扶養家族として所得税の控除
  9. 婚姻関係ではないが親族として名乗ることが可能

などが挙げられます。
パートナーシップと比べると養子縁組は上記のような国から社会的な保障を受けられること、それ自体が大きなメリットといえるのです。

夫婦ではないが一つの家族としての保障が受けられる手段が養子縁組であり、地域を限定したパートナー間の限局的な保障に留める場合はパートナーシップと覚えておくと分かりやすいでしょう。

気になる養子縁組をする際のデメリット

メリット以上に気になる養子縁組のデメリット、それは前述で少しだけ触れた婚姻には届かない法的メリットや、同性カップルの養子縁組に対する腑に落ちない世間の目が根底にあるように感じます。それらをまとめてみると、

  1. 当事者自身も周りから見ても、パートナーであるのに親子である不自然さ
  2. 年齢によって養親、養子が自動的に決まり、名乗るべく苗字が養親のもの一択
  3. 婚姻と異なり貞操義務が無い為、浮気による慰謝料請求権がない
  4. 離別の際は、その協議だけでなく苗字の変更が煩雑
  5. 家族、会社等への告知で理解が得られるかが未知数
  6. 養子縁組悪用を疑われるケース
  7. 外国人パートナーに在留資格を与えられない

挙げれば切りがありませんが、考えられるところを列挙してみても、これだけのデメリットが挙げられます。

養子縁組がゲイカップルにとってベストではない!その訳とは?

ゲイやレズビアンカップルでも、その時点では良かれと思って養子縁組をして親子になったものの、後々大きなトラブルに泣いてきた当事者は少なくありません。

伝統的に日本のLGBTQとの結びつきが強い制度である養子縁組、ここではそれが持つ特質がゆえに報告されるであろう、または頻繁に起こる問題について提起していきたいと思います。

同性結婚が可決された場合、結婚ができない可能性あり

真剣な恋愛、そして二人の将来をしっかり描いているゲイカップルはしばし、あえて養子縁組をしない選択肢を選ぶ方がいます。
なぜかというと、いずれ法律が改正され同性間の婚姻が可決された場合、養子縁組を解消した後に同性結婚をすることができなくなるからです。

難しい法律の話が絡んできますが、民法第736条には「離縁による親族関係の終了の後に、あらたに婚姻をすることができない」とあり、離縁をしてから同性結婚をすることが認められていないのです。

細かい条件を調べずに養子縁組をしてしまう方も多々いるようですが、将来どのタイミングで日本が同性結婚にGOサインを出すかは未知数。
しかしそのいつ訪れるのか分からない最高の瞬間に婚姻届に判を押せないは、残念極まりないこと。

勿論同性結婚が可決される過程において、この危機的な問題点も協議されると思いますが、比較的イージーに利用できる養子縁組なので、将来的な目線で決断することが大切になってきます。

両者の家族間、世間体のトラブル

養子縁組をしているカップルの声を聞いていると、共通するいくつかの問題点が浮かび上がります。
私の友人も両者20代半ばそこそこで養子縁組をして親子になった若いカップルがいましたが、ここではわかりやすく彼らを例に挙げて説明していきます。

彼らが陥った大きな問題は、パートナーの養親になった彼の親族間についてです。
年齢こそ1歳差とほぼ同年代でしたが、養親側の家族がその養子縁組の事実を知らなかったがゆえに、息子のパートナーに敵意を剥きだしたこと。

ゲイ男性で家族と不和がある場合は少なくありませんが、このケースは養父側の実家が比較的裕福な本家筋であったこと。
そこに知らぬ間に同年代のゲイのパートナーが養子として戸籍に入り込んだということで、財産狙いのレッテルを貼られるという大惨事に……。

「長男が男と養子縁組をするとは何事か!」とマイノリティに対する理解が一切得られず、彼は実家と疎遠になっただけでなく、パートナー間の争いも増え結局離別することになりました。

ここでの問題は家族のコミュニケーションがとれておらず、尚且つ親側の配慮、理解が足らず、子どももカミングアウトをしていなかった。ふとしたきっかけで親側が戸籍を確認した際にアウティングのような形で、性的志向がバレてしまったわけですね。

養子縁組をポジティブに捉えるのならば、二人の関係性を親族に理解してもらえる最大限のツールになり、尚且つ法的な庇護を得られる点です。
しかしその当事者が置かれている状況や家族の価値観によっては、予期せぬトラブルに巻き込まれる可能性も少なくありません。

まとめ

養子縁組、よく聞く言葉ですがその実情について私達ゲイ当事者も知らないことばかりで驚いた方も多いはず。
自分は養子縁組とは縁がないと思っていても、いつ運命の人と出会い価値観が変わるとも分かりません。

養子縁組は結婚制度に準じた社会的保障を得ることができる、現状では唯一の制度となっており、パートナーシップとは一線を画するものとなっています。

しかし家族とのコミュニケーション不足やカミングアウト、金銭的な不信感からトラブルを生んだり、どちらかの不貞行為で慰謝料を請求できない、将来同性結婚ができないなどの落とし穴もある為、その利用に関しては十分考慮して手続きを取る必要があるのです。

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この記事を書いた人

橋本ウサ太郎

橋本ウサ太郎
新宿二丁目の元バーマネジャー、海外放浪の末、年下スペイン人男性と同性婚。
スペインの田舎町で悶々とした日々を送りながら平和に暮らすゲイ。
アメリカでの代理母出産により二人パパになる予定の三十路ライター。
好きな言葉は、「ペンは剣よりも強し」。

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