悩ましきHIV感染者の保険事情を解説。
もしHIV陽性となっても入れる保険はあるのか

  • 2021.02.01
  • 2021.02.10

ライフ・生活,健康

HIVを取り巻く環境は大きく変わり、陽性当事者も投薬を継続することで健常者と何ら変わらない生活を送れる時代になりました。
しかし感染した本人にしか分からない悩ましさの一つとして、保険サービス加入があります。

今回はQOLを陰で支える立役者、医療保険、生命保険について解説。
果たしてHIV感染者でも加入できる保険はあるのでしょうか。

HIV感染者の保険加入が難しい理由を考察

長い人生という尺度でみると、医療保険、生命保険は大きな括りで私達の生活のセーフティーネットになってくれます。
「あの時入っておけばよかった」というのがHIV感染者当事者の大きな声の一つです。

ここではまずなぜにHIV感染者の保険加入が著しく困難を伴うのか、その理由について検証していきましょう。

HIV感染者の保険加入を阻む原因

HIV陽性者と一言でいっても、感染初期でまだまだ投薬の必要がない方、エイズ発症を防ぐ為すでに投薬を開始しほぼ健常者と同じ健康な毎日を送っている方、もしくはエイズを発症し入退院を繰り返している方もいます。

しかしCD4の数や大小に限らず、どの場合に関してもHIVに感染している事実は変わらず、それがトリガーになり医療、生命保険などの加入が難しくなります。
なぜHIVに感染していると保険加入が難しいかというと、健康上に問題があると判断されるからです。

これはHIVに限らずガンや脳腫瘍、脳卒中など重篤な病気を患っている場合も同様、医療保険や生命保険加入は難しくなります。
勿論例外はありますが、保険加入時には告知義務があり現在の健康状態や既住歴を明記する必要があります。

ここで虚偽の報告をすると重大な規約違反を犯すことになり、その嘘が明らかになった場合は保険加入の事実が無効になります。

HIV感染の場合については、服薬をしていても、がんになる可能性や早期死亡率が高いこともあり、各保険会社にとってHIV感染は非常に高リスクであると判断されます。
また他の病気と異なり客観的なデータ不足が原因になり、特に生命保険加入が難しくなります。

つまりエイズを発症した場合に他疾患と異なるのが、その感染者が増えているにも関わらず、服薬中の状態、日和見感染症を発症した際の予後などの医学データが乏しい事実、これが日本において保険加入を難しくしている要因なのです。

HIV感染者でも入れる保険とは

実はHIVに感染しているからと言って、イコール保険加入ができないわけではありません。
多くの保険会社でNOを突きつけられる事実は変わりませんが、HIVに感染していても加入できる保険は存在しています。

ここでは知っておきたいHIV感染者が加入可能な保険の実態について解説していくのでぜひ参考にしてみてください。

医療保険の場合は緩和型を狙う

HIV感染者の加入が難しい保険業界ですが、実は告知義務が少ない、いわゆる引受基準緩和型と呼ばれる種類の医療保険であれば加入の可能性が高まります。

緩和型はいわゆる告知項目が通常の医療保険より少なく、HIV感染、服薬の事実を申告せずに申込ができるものから、若干掛け金が割高になるまたは補償内容が劣ることを受け入れれば加入できるものもあります。

実際エイズを発症していて引受基準緩和型保険に加入できたケースは報告されているので、HIVだから保険加入は無理と諦める前に一度相談をしてみることをおすすめします。

HIV感染者も加入OKな生命保険もある

目まぐるしく変わる社会、日本においてもLGBTQへの認識や関心が高まり、地方自治体レベルでのパートナーシップが導入され、少しずつ日本なりのベクトルでよい方向への変化が生まれてきました。

それらの改革は実は保険業界にも及んでおり、昨今はLGBTQに特化した保険も登場しています。
これらの特徴をまとめると、

  1. HIV感染、服薬の告知の必要がない
  2. 性同一性障害でも加入可能
  3. WEB完結で申込可能
  4. 保険金受取に同性パートナーの指定が可能

などが挙げられます。

ただしこれらは海外在住の同性結婚組は申込から排除される場合も。同性パートナーだと証明する書類や同棲の既成事実などを証明する必要がありますし、HIV以外の疾患を患っていたり既住歴や持病が告知事項に触れたりする場合は加入できません。(糖尿病、うつ病や心筋梗塞など)

また保証内容が乏しく、解約の際に払戻金がないなどのデメリットもあるので、その保険の一長一短をきちんと把握して申込む必要があります。
しかし総合的に見ると、対面、ヒアリングで自分の性的指向だとかHIV感染の事実などのデリケートな問題をカミングアウトする必要がない点は大きなメリットかもしれません。

本当に必要かどうかを考えて加入する

いつまでも自分は健康、若いからいくらでもお金は稼げるなんて思っている方も多いと思いますが、HIV感染も、いつ入院して死期を迎えるかという想定はできません。
だからこそ保険は「不安を感じたその瞬間」に加入するべきなのかもしれません。

しかしここで勘違いしないでほしいのは、やみくもに保険に入ればいいというわけではないということ。
保険貧乏にならないこと、つまりいかに自分のライフスタイル、価値観に合う保険を選んでいけるかということです。

例えば独身貴族、いつまでもカジュアルな恋愛を楽しみたい方は生命保険の加入はそれほど必要ないかもしれません。
一方でHIV感染して様々な不安に押しつぶされそうな方の場合は、今後の入院などに備えて緩和型であっても医療保険を申込むべきだと思います。

このように自分の健康、価値観に合わせた保険を、決して多くはない選択肢の中から選んでいく、これが何よりも大切になってくるのです。

まとめ

今回はHIV陽性者にとって死活問題になりかねない保険加入について解説してきました。
現在HIV感染の事実を告知事項から外している、今までの保険業界の常識を飛び越えた保険も少しずつ誕生しています。

必要なのは医療保険なのか生命保険なのか、それとも両方必要なのか、自分自身の恋愛の価値観や現在の健康状態を考慮して、必要と思われる保険に加入をしていきましょう。

なお前述のWEBで完結するタイプだけでなく、WEBの保険会社でもメールやチャットシステムを通して加入可能な保険や種類を相談できるので、ぜひあなたのライフスタイルにあった保険を探してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

橋本ウサ太郎

橋本ウサ太郎
新宿二丁目の元バーマネジャー、海外放浪の末、年下スペイン人男性と同性婚。
スペインの田舎町で悶々とした日々を送りながら平和に暮らすゲイ。
アメリカでの代理母出産により二人パパになる予定の三十路ライター。
好きな言葉は、「ペンは剣よりも強し」。

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